放送大学 健康のしおり −運動をする楽しみ− より
東京大学名誉教授 放送大学客員教授 宮下充正
大都市圏に住む中年のサラリーマンは、毎日満員電車にゆられ1時間以上もかけて
通勤しているので、自分ではかなりからだを動かしていると思っていないでしょうか。
実際に中年のサラリーマンを対象として1日中の心拍数を記録して調べてみると、
あまり運動していないのがわかります。
運動の目安となる心拍数は、駅の階段を上るときだけ100拍/分を越えますが、
電車に乗れば90拍/分程度に落ちてしまいます。
そして、オフィスで椅子に座って仕事しているときは70拍/分程度で終始しているのです。
逆の見方をすれば、駅の階段を上がるだけで心拍数が100拍/分を越えてしまう
というように、呼吸循環系機能はかなり低下していると推定されるのです。
また、施設で介護の仕事に当たっている8名の人の対象として、1日中の心拍数を
測定してみますと、仕事中の平均心拍数は92拍/分でありました。
この値は推定最高心拍数の48.5%です。
そして、最高心拍数の75%を越える心拍数となる時間は全員にみられませんでした。
このように、重労働と思われがちな介護という仕事でも、呼吸循環系機能に負担に
なっていないのです。
それでも疲れるというのは、体力に余裕がないからといえるでしょう。
このように仕事だけでは、運動不足となってしまう機械化された社会では
生活する私たちの健康・体力は、危機に瀕しているといえるのです。
動物園の動物たちがそのいい例で、食事は十分に与えられ、野性のときに比べはるかに動くことが少ない生活を送るようになって、さまざまな障害が発生していました。
しかし、今では食べ過ぎないようにという栄養管理と、十分とはいかないにしても
積極的に運動させようとする飼育が行われています。
機械化の進んだ現在に生きる私たちも、極言すれば動物園の動物と同じ状態にいる
といえるでしょう。
しかも、私たちには、飼育係がいないので、自分の栄養の管理をし、自分で自分の運動不足を
解消しなければならないのです。
(原文のまま)
健康太極拳指導士
スタビライゼーション・インストラクター 土田晶子
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